本記事は、ハチイチ商店で販売している商品の生産者様にインタビューを行い、その会社の歴史や、商品へのこだわり、ものづくりへの思いをご紹介しています。
今回は、株式会社門崎の取締役であり食品製造事業部 部長を務め、現在の格之進ハンバーグのベースを5年もかけて作り上げた『ハンバーグおじさん』こと松橋孝幸さんに商品づくりのこだわりなどを伺いました。
なお、本インタビュー記事は、ボリューム満点になってしまったため、2部構成でお送りします。
▼前編はこちら
『食を通じて岩手を活性化!こだわりの熟成肉とハンバーグを提供する「格之進」(株式会社門崎)』
株式会社 門崎へ入社してからの歩み
▲左側が「ハンバーグおじさん」こと松橋孝幸さん
現在は取締役兼商品製造事業部 部長として活躍する松橋さん。元々は全く別の業界で働いていましたが、結婚を機に転職を考えるようになります。
衣食住に関わる仕事をしたいという思いもあり、全く料理はできませんでしたが、調理技術を学べば自炊もできるようになり、家族のためにも自分のためにもなると門崎への入社を決めました。
入社してから3年ほどはお肉にも触らせてもらえなかったそうです。そこから経験を積んでいく中で、徐々にお肉を切らせて貰えるようになっていきます。
それから、さらに2~3年後には、ハンバーグづくりにも携わらせて貰えるようになりました。最初は、ハンバーグをこねたりラップに包む作業をずっとしていたそうです。
調合を任せてもらえるようになったのは、入社6~7年目頃の事でした。
5年をかけて格之進ハンバーグをブラッシュアップ
今ではハンバーグづくりのためにお肉の選定から行うなど、格之進のハンバーグは非常にこだわりをもって作られています。
ただ、松橋さんがハンバーグづくりに携わる前は、余ったお肉の端肉を捨てるぐらいならハンバーグでも作ろというような状態だったそうです。
正直味も現在のハンバーグよりは差があったと言います。
そこから、いろんな生産者が関わって作ったものを美味しく仕上げたいと思いもあり、毎日ハンバーグを食べてブラッシュアップに取り組んだそうです。ブラッシュアップの期間は約5年にものぼりました。
当時は製造ロットとの関係もあり、ハンバーグづくりは一か月に1度しか行えなかったそうです。チャレンジできる機会が少なく失敗できない状況で、学んだことを次のハンバーグづくりに活かさなければいけませんでした。
食べて作って試行錯誤を重ね、一日10個ものハンバーグを食べることもあったそうです。
ハチイチ商店からの一言 |
お客様がベストな状態で味わえるハンバーグを
松橋さんがハンバーグづくりにおいて大事にしているのが、「お客様の元にハンバーグが届き自身で焼いた時にベストの状態で食べられること」です。
工場で作って美味しくても、お客様に届いた時に美味しくなければ意味がありません。
そのため、ベストな状態で提供できるよう、逆算してハンバーグの製造はおこなわれています。
まず、焼かないで生の状態で食べ、焼いてみて食べて生まれたズレを微調整する。
微調整したものを冷凍して、自宅に持って帰り解凍して焼いて食べてみる。
作るたびに配合を変えるなど試行錯誤を繰り返し、お客様が食べる時に一番美味しい状態になるハンバーグを作り上げました。
肉汁コントロールでジュ―シな仕上がりに
美味しいハンバーグに欠かせないのが、たっぷりの肉汁です。
脂は部位によって溶けやすさが異なるため、格之進では5種類の部位の特徴を踏まえて上手く組み合わせ肉汁のコントロールを行っています。
ハンバーグを焼いた時、噛み締めた時など5段階に分けて肉汁が広がる、とてもジューシーなハンバーグを楽しめます。
隠し味は塩麹
隠し味として入れているのが塩麹です。
古来からある伝統の調味料を使い発酵の技術と熟成をかけあわせることで、日本にしかないハンバーグという料理をより和のテイストに近づけようと考えたそうです。
塩麹を入れることにより、旨味が引き出されふんわりとした食感に仕上がっています。
岩手産にこだわった「つなぎ」
つなぎとなる卵や牛乳・パン粉は、地元岩手の食材にこだわって使っています。
パン粉はパン粉やさんと打ち合わせを重ねて、添加物を取り除いたオリジナルのパン粉を使用しているそうです。
「生産者が分からないと商品に気持ちも乗らない」と話す松橋さん。
実際に牛乳工場やパン粉工場にも出向き、一つひとつの原材料と真摯に向き合っています。こうしていろんな人の魂を込めて、格之進ハンバーグは作られているのです。
命と真摯に向き合って牛も生産者も納得できる商品作りを
ハンバーグのメイン食材となるお肉は、元々は命あるものです。
お客様に提供されるまでに生産者やと畜場など多くの人が関わっていることを感じ、中途半端な気持ちでは向きあってはいけないと松橋さんは思ったそうです。
黒毛和牛は種付けしてお肉になるまで、4年もの歳月がかかります。
牛が屠殺されるところも見ているからこそ、牛に対しても生産者に対しても真摯に向き合わなければいけないと強く感じました。
牛が「4年間生きてて、ハンバーグになってよかった」と思えるように作ることが大事だと松橋さんは話します。
生産者に「なんで一生懸命育てた牛をハンバーグにするんだ」そんな言葉を投げかけられたこともあったと言います。
ハンバーグと言えば一般的には端肉で作るものだけど、それを覆して生産者に俺の牛でハンバーグを作ってほしいといわれるクオリティの商品を作ることを目指しています。
お客様への想い
お客様への思いについて松橋さんにお聞きしました。
売る側として美味しい物を売るのは当たり前のことです。そのうえで、弊社が伝えたいのは、岩手県のものを使う大切さです。なんで、岩手のものを中心に使っているかと言うと、農業は跡継ぎがいなくなってきているという問題があります。若い人からすると、農業は儲からなくて大変っていうのが意見のほとんどだと思うんです。
このままにしておくと、日本の生産物はどんどんなくなっていくわけですよね。そうすると海外に頼らざるをえなくなって、海外のものを食べるために一生懸命働くみたいな状態になっちゃうと思うんですよね。自分たちの生まれ育った土地で作られたものを食べて後の世代に残していきたいという思いの中で、弊社は岩手にあるので岩手の生産物を中心に扱わせてもらってます。
弊社の特徴として、原材料を仕入れるときに例えば100円で販売しているものを120円で買うための商品力であったりブランディングをしています。
一般的には値切りするんですけど、それだと生産者を守ることにはなりません。高く買うことによって、仕入れてるもののクオリティーも上がるわけですよ。日本の方ってすごく優しいので高く買ってくれるから、もうちょっと頑張ってつくろうって絶対なるんです。より高い付加価値を付けて消費者に販売することで、まずは生産を守ることが出来るっていう感覚を消費者には持ってほしいなと思ってます。
食べることは投資なんですね。一般的には消費っていう考え方かもしれないですけど、消費じゃなくて自分たちの未来に対する投資なんですよ。岩手のものを守るための投資なんです。食材に限らず何か買うときに、今日は岩手のものだけ食べてみようとかね。そういう人が一人でも多くなっていけば、その分生産者が生産維持可能になっていくはずです。
日本のものを食べて日本の生産物を守るっていう感覚を持ってほしいっていうのが、一番強く思うことですね。
今回は株式会社門崎の松橋さんにお話を伺いました。
ありがとうございました。
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